食べられなかったドーナツの話
《弊社》には、エネルギッシュな人が多い。
《弊社》はバリバリの営業会社である。数年前あまり大きな声では言えない理由で《かつて弊社だったもの》は現在の《弊社》になった。元々《かつて弊社だったもの》、かつて入社したはずの会社は技術ギークの集まりのようなド文化系会社だったが、紆余曲折後、社風が一気にド体育会系になった。
自分だったら行けと命じられた時点で即退職するであろう過酷な研修を経てなお在職している超戦士の集まりである営業部は、同じ人類であるのが不思議に思えてくるほどのアクティブさである。気付けば《かつて弊社だったもの》出身の社員はほぼいなくなっていた。
つまりここ数年、私はずっと肩身が狭かったのである。
先日、午後三時ぐらいだったろうか。
その日は出勤日だった(出勤とリモートワークが半々の生活をしている)。パソコンに向かって作業をしていると、「城田さん」やさしい笑顔を浮かべた総務のAさんが手招きした。
「社長から差し入れです。どうぞ」
指差された先には、某クリスピードーナツのどデッカイ箱が置かれていた。見ていると催眠術にかかりそうなぐらい隙間なくみっちり並んだドーナツ。もちろん個包装などされていないドーナツ。
若く、力が有り余っている営業戦士たちが、
「わあ! ありがとうございます! おいしそう!」
と次々手にとっては軽々ぱくついていく。
私はというと、箱の前で立ち尽くしながら、完璧に""理解""した。
――あ、私、ここにいるべき人間じゃないんだ。
「余りそうだから、もう一つ食べてもいいですよ」
「本当ですか。やったあ!」
営業部の面々の楽しそうなやりとりが私の頭上を飛び交っていく。「ありがとうございます」グレーズがどっさりかかったドーナツは昼食でお腹いっぱいの身では到底食べられなかった。私はドーナツをそっとティッシュで包んだ。
日が代わり本日、リモートワークをしていたら、夕方ごろ小腹が空いた。買っておいたお得用のかりんとうをざらざらと皿に出し、ぽりぽりと齧る。
ちょうどいい、自然の甘さ。ちょうどよい、量。
思わずほっとした。
私はあの日、あのドーナツを食べられなかった。それはかつてうまくいかなかったいかなる仕事の失敗よりも、ハッキリとした《戦力外通告》だった。
実は、近々、《弊社》は《弊社》ではなくなる。
新しい環境が、かりんとうのような場所でありますように。
そう願うばかりである。
おわり(1000文字)
拝啓、-会社の先輩へ-
【2013年12月13日に書いたブログを再編集の上、再掲しています。】
寒さもひとしお身にしみる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
社畜っぷりは相変わらずですが、おかげさまで、私も元気に暮らしております。
さて、この度、最近ほぼ毎日顔を合わせているにも関わらずこの様に改まって手紙を書いているのは、先輩に謝りたいことがあるからです。
先輩は、とても優しい人ですね。
厳しい人でもありますが、それは仕事に対し、実に真摯に向き合っているから。
私の過ちであっても、叱った後には必ずフォローしてくださるし、相談や質問にも答えてくださる。目標の為にとても辛い局面であっても折れない。常に周りの状況に対し、配慮を欠かさない。
私ごときには勿体無い、素晴らしい先輩だと思います。
「城田、疲れてる? 目が二重になってるけど…」
今日も仕事中、この様に声をかけて下さりましたね。
私は、生来奥二重です。ですが、目が疲れると、どういう原理か二重になります。
以前、どこかのタイミングでポロリとこぼした、そんな些細な個人情報も、先輩は心のうちに留めてくださっていたのでしょう。そして、私の目が二重になっているのを見て、もしや疲れているのだろうか、と心配してくださったのです。
先輩の鋭い洞察力、忙しい中でも声をかけてくださるその御心の深さ。
私の胸は、感動に打ち震えました。
すみません先輩、これアイプチです。
【追記】
これは置いていった先輩とは別の先輩。結局、新卒で入った会社は激務のため一年で退社してしまったので、8年経った今でも私が運転したことのある車種は教習車、2トントラック、軽トラのみです。辛いことも多かったですが、のちの人生で話のタネにはなりました。
ポンコツの宅急便
【2013年11月10日に書いたブログを再編集の上、再掲しています。】
すこし坂になっている道に、2トントラックを駐車したときの話なんですが。
三宮っていう、兵庫県有数の繁華街に、仕事で行ってまして。
その日はあっちいってこっちいってとバタバタと移動せねばならない日だったのですが、まあ、とても焦っていたのですね。時間の制限とかあって。
ヤベッ! ってキーを抜いて車を飛び降りて、ドアの鍵をかけてダッ! と走り出したのですが、
車の後ろを抜けようとしたときにですね、なんかね、なんかも、視界の端でダッ! って駆けだしたんですね。
停めたはずのトラックがね、こっちに向かってゆっくり向かってきてました。
坂の頂上にトラックの頭が向くように駐車してたんですが、じりじり、じりじりってね、こっちに向かってきてるんですね。どうみても距離詰めてきてるんですよね。
あっ。サイドブレーキ引き忘れたなー。
都会ですから他の業者もたくさん車を停めてまして、私の停めたトラックの後ろにも大きな冷蔵車が止まってたんですけど、このままいくと、誰がどう考えたって私のトラックがメテオドライブする状況なんですよね。ビックバンですよね。
その冷蔵車の後ろにも最低8台は車が停まっている状況ですよね。ビリヤードですよね。
最終的に確実大通りに押し出しホールインですよね。
夕日傾く夕方4時、さあさあよってみてらっしゃい、おっかなびっくり華麗な玉突きショウ!
…。
いやいやいやいやアカンアカンアカンアカン!!
この間、0コンマ秒。
次の瞬間には、ガッ!! と車のアオリ部分を掴み、全力でグッ!! と車体を抑えていました。
ズズズ…ッ、腕の筋肉が軋み、コンクリートを激しく摩擦しながら足の裏が表面を滑っていく。
「クッ…!」
バトル漫画でよくある、敵のスゴイビーム攻撃を受け止めてるシーンあたりを思い浮かべていただいたら、わりとしっくりきていただけると思うのですが、あんな感じでした。
ここは任せてー! 私がくい止めるからー! って感じだった。
原因私なんですけど。
するとですね、奇跡が起きまして。
車体がね、なんとか止まったんです。腕力と脚力で。
うわ、すげー! 鍛えた甲斐あったなー! ってなったんですけど。
安心したのも束の間。
まあ当たり前なんですけどね。
誰がサイドブレーキ引きにいくねんってなりましてね。
手離したら車動いちゃいますからね。一ミリたりとて動けませんからね。
私安定の劇団ひとりなんでね。
もうね、叫びましたよね。
「サイドブレーキ引いてもらえませんかー!」って。
世界の中心で愛を叫んだ森山未來がいたなら、三宮の中心でサイドブレーキ叫んだのはこの城田ジョージだってね、アカデミー賞もらってもいいぐらいの熱演でしたからね。自作自演賞あたり受賞してもよかった。
さいわい、近くを通っていた黒いエプロンの男性が助けてくださいまして、サイドブレーキを引いてくださってことなきを得ました。
「さすがにビックリしたわ」と言われて、そら2トントラックを押さえている知らない女に突然「サイドブレーキ引いてもらってもいっすか!!」って言われたら驚くわー「私も驚きました」って返したけどどう考えてもお前発言していい台詞じゃない。
そのあとふつうに仕事していたのですが、
「私さっきね! 2トントラック支えたんすよ!」って一緒に現場に行っていた人に話したら、
「ヘタしたらお煎餅になってたかもなー」
って返されて。
その場では、アッハッハッハッって笑ってたんですけど、不意にですね。そういえば、2トントラックって、車体の重量、どれくらいあるんだろうって疑問に思いまして。ちょっとね、後々ググってみたんですけどね。
「2t
重量:2.330kg」
生きてるってそれだけで奇跡なんだなって思いました。
(トラックが)おちこんだりもしたけれど、私は元気です。
ぼうけんのしょ~「勇者、大きな忘れものをする」の巻~
【2013年5月16日に書いたブログを再編集の上、再掲しています。】
以前、わたくしめの運転免許取得の様子をブログに書いたのですが、
あれからはやくも四ヶ月ですか。私、車の運転、しております。
2トン軽トラック。
教習車、
からの、
2トン軽。
ホップ、ステップ、ジャンプ。
そんなものなかったよね。
大砲で大空へ撃ちこまれて、直に天国への扉に体つきささったよね。血まみれだよね。
前後に初心者マークを貼り走るトラックが、住民のかたがたにどれほどの恐怖と不安をあたえたかは想像にたやすいところですが、運転してる本人もそれに負けず劣らず、まいにち恐怖と不安のショータイムでした。
ですが今では、大抵最低一日一回は車を運転しています。ひとりで運転して現場にも向かいます。
ときどきひやりとしながらも、まだなんとか、命生きながらえています。
ならうより慣れろ、ってこれかも!
とはいえ、まだ本格的に車の運転をはじめて一ヶ月にも満たない訳です。
軽減はしましたが、車への恐怖心もまだまだ課題。
なので、ひとりで現場に向かうときはかなりゆっくり時間を取って、早めに行くようにしています。
◆
今日も、集合時間の一時間半前に会社の駐車場にて、車に乗り込みました。
渋滞さえなければ三十分で着く、直線道路の先に現場はあります。
時間が早いのもあったのか、さいわい混まずスムーズに進んでいました。暑すぎない気温。ラジオからは軽快な音楽が流れ、眠さはあれど、心地よく車を運転していました。
すると七時ごろ、携帯が鳴りました。
着信を見ると、先輩の名。
運転中なので取れないでいると、五分後にもう一回。
その時点でもう現場の側だったので、現場に着いてから電話を折り返すことにしました。
現場近くのスーパーの駐車場に停車し、先輩に電話をかけ直しました。
この時点で、時計は七時十五分。
私「おはようございます」
先輩「あ、おはよう。今どこにおる?」
私「駐車場です」
先輩「おお、じゃあ会社の前で待っとくわ」
………ん?
私「会社まで折り返すということですか…?」
私が発したこの台詞から、ふたりに緊迫感が走りました。
先輩「…え、え? 今、どこ? 会社の駐車場やんな?」
私「現場です」
先輩「…え?」
私「現場、着いてます」
パズルのピースがはまる音。
先輩「……今日は一緒に行くって、昨日言ったよな?」
私、とてもうっかりものです。
忘れものとかね、しょっちゅうする。
チェックリスト作っても、まずチェックリストに書くの忘れてる、とかザラにやる。
だから、かなりね、準備したりとか、確認したりとか。気を付けるようにはしてるんですけど。
先輩を会社に忘れてきたよね。
作業開始まで四十分の余裕があったから寝不足だし車で寝ようと思ってたんだけど、寝るとか無理だった。
いやいっそのこと、永遠の眠りにつきたかった。
「…別の車さがして行くから…」という先輩の声を最後に切れる通話。
ツーツーと無情でつめたい音が響く車内。
ぽつんと残された私。同時に(先輩を会社に)残した私。
道具を忘れる、作業を忘れる。
まだそこらへんは自分自身の予想も手が届く範囲だけど、まさか会社の先輩を忘れてくる日がこようとは思ってなかった。
チェックリストにもちろん、「先輩」の項目はない。
それからは気が気ではなかった。
とりあえず着いたらやる作業をやったあとの時間はすべて、いかに謝るかシュミレートに費やした。
別の会社のかたに励ましてもらい既に半泣きになりながら、先輩の到着を待った。
結局、
「遅刻してくるよりマシだよ~」
と許してもらえて(さいわい代えの車もありました)、事なきを得たのですが、
四ヶ月前、
「私も勇者になりたい!」と言っていたひとりの駆け出し勇者見習いだった私も、多少なりと勇者に近付いているような、そんな気がしました。
ひとまず、朝八時、つよく一日の幕開けを照らすまぶしい光の中、大泣きしながら「本当にすみませんでしたああ」と謝る光景は、人生において記憶に残るステージになりそうです。
一秒でも早くデータバグってすべて消えたらええのに、と願わずにいられません。
【追記】
新卒ポンコツシリーズ。厳しかったけどとてもいい先輩でした。
それは西暦20XX年のはなし
【2013年1月22日に書いたブログを再編集の上、再掲しています。】
わたしね。
不器用なんです。
同時に別のことが出来ないんです。
ピアノとか、未だに弾ける人の体の構造わかんない。鍵盤弾いてる上半身と、ペダル踏んでる下半身、別々の生き物じゃねえのかって疑ってますから。
それと、半端なく手先に繊細さが無い。
大学、もの作る部署にずっと居たんですが、最後の最後まで工具まったく使えなかった。
釘まともに打てるか、って聞かれたら、正直、自信ない。
そんな、不器用なわたくしめ。
出来れば面倒ごとは避けて通りたい、いや通りたくもない近くに寄りたくもない、まず歩きたくない。
寒いしコタツで寝てたい。
コンビニですら行きたくない。
そうしてたかったんですけど。
そうもしてられない事態になりました。
運転免許。
就職の為に、絶対要る! ってなっちゃって。
まあ、「要る!」って言ってるところに、「オッス、ないっす!」って行ったから、当たり前なんですけど。
当然の流れで、「ウイッス、じゃあ取ってこいよ」ってなっちゃって。
なので今、います。
西、四国の玄関、うどんのくに。香川県。
免許を取りに、きています。
いわゆる、免許合宿とかいうやつです。毎日缶詰でやる代わりに、お前らに最短経路で免許取らせてやるよ、ってあれです。
私はMTなので、最短は15日。
15日というと二週間ちょっとで免許が取れる訳です。
一応入社が懸かっている緊急事態なので、妙なところチキンな私は「こりゃあいいや」と申し込みをしました。
そして来る1/14。
アンパンマンのラッピングが施された特急しおかぜに乗り、香川にイン。
合宿中は寮に入って生活するので、はじめての寮生活にドキドキ?!
さあ、楽しいドライビングデイズが、待って―――――
なかった。
いやー、待ってなかった。
びっくりするくらい待ってなかった。
いかんせん、前述の通り、不器用なんです。
なのに、よりによって選択したのは、クラッチ、ギア操作を必要とするMT免許。
ハンドルを握りながら、クラッチを踏みながら、ギアを変えながら、前後左右確認しながら運転する、同時に多種多様な動作を必要とされながら、短い一瞬一瞬で風景、状況が変わる、臨機応変さを求められる世界。
怒られるのはまだましでした。
黙られるのが一番つらい。
はじめの方は優しく根気強く教えてくれてた教官が、「クッ…」と拳をやるせなく太ももに落としている姿を見るのがつらい。
街でスイーッって車乗ってるひとは皆勇者なんじゃない?
街一個ぐらい救っちゃってんじゃない?
エクスカリバー二三本抜いてんじゃない?
部屋に帰ってはおのれに絶望。朝が来れば実技の文字を見て震え。運転すると車体とギアが震え(ギアチェンジ失敗)。
もう毎日毎日帰りたい帰りたいと願う日々の連続でした。
そんな合宿生活も、本日で八日目。
こんな私でも、仮免、取れてしまいました。
最短コースで卒業出来るなら、今日がひとつの折り返しです。
涙の数だけ強くなれるよとZARDが聴こえてきそうです。
こんな不器用でも仮免って取れるんだ、とおのれの身の話ではあるのですが強く感じ、この度ブログに書かせて頂いた次第で御座います。
まあ、少しは前向きになった訳ですが。
仮免突破直後、すぐ教習所を飛び出し、人生で初の路面を走りました。
うん、どう考えても、路上走ってる人全員スクウェア・エニックスでゲーム化されてんじゃないかな?
私もいつかは、ジョージクエストの勇者になりたい。
装備は、MT運転免許で。
【追記】
卒検、グループで私だけ落ちてたときの衝撃は一生忘れないと思います。(後で受かった)
某嵐のサクライくんと私
【2012年9月1日に書いたブログを再編集の上、再掲しています。】
先日まで、私は某嵐の櫻井君とメールをしていました。
といってもやりとりはしておらず、私のメアドに櫻井君が一方的に送ってくる形です。櫻井君が果たして何処から私のメールアドレスを手に入れたのかは不明ですし、信じられない話かもしれませんが、本当の話です。
◆
櫻井君は、一通目から大きな爆弾を落としていきました。
「俺、ジ※ニーズ辞めようと思う」(※一部伏字)
衝撃です。
衝撃以外のなにものでもありません。
きっとどの芸能リポーターすらも掴んでない情報に違いない。
この見ず知らずの大阪の隅でひっそり生きている私に相談するくらいですから、櫻井君の苦悩はよっぽどのものだったでしょう。一日に一通か二通メールを送ってくるようになりました。苦悩する彼の姿をメール越しに感じながらも、無力な私はうまく返信できない歯がゆい日々を過ごしました。
お悩みメール貰い始めて2日後、またもや衝撃が走りました。
「俺、社長に『辞める』って言ってくる」
なんということでしょう。
人気絶頂の某嵐のメンバー櫻井君が辞めるだなんて。
私は今、一人の芸能人の歴史が動く瞬間に立ち会っている。
スマートフォンが汗で滑ります。
この頃になると櫻井君は私が自身を認識しているのか疑うようになっていました。私が返信を怠っていた所為です。
元々櫻井君は「俺、AのSなんだけど」と直接名乗ってきていたわけではありませんでした。
ただ、表示される名前も『翔★』だったこと、アイドルであること。そして度々本文に出てくる社長の喋り方がどう考えても「あの人」だったので、私が勝手に判断していたのです。
さすがに二日間メールを送りつづけ、仮にも彼はスーパースターですから、私が無反応だったのがちょっと気になったのかもしれません。
はじめにぼかして送ってきたのは櫻井君の方なのですが、「俺、あのグループのSだよ、知ってるよね?」等送ってくるようになりました。
◆
さて、暫くして、続報が届きました。櫻井君が、辞める意を社長に打ち明けたと。
さすがの社長も櫻井君の思いに戸惑ったらしく、
「You…10分時間あげるから…もう一度考えてみなさい」
と言われたようです。頭冷やせよちょっと、と大人の対応です。まあ当然と言わざる得ないでしょう。
「俺の人生はこれで決まる…こんなに切実な願いなのに、聞いてくれないなんて酷いよ…(涙)」
櫻井君の一生懸命な気持ちが、語尾の「(涙)」から伝わってきます。
結果が気になりながらも、私は眠ってしまいました。
◆
次の日、櫻井君からメールが入っていました。
話し合いが長引きに長引いたのでしょう、受信日時は深夜二時半でした。
あの、嵐の櫻井君が事務所を辞めてしまう。
にわかですが嵐を応援していた身にとってこの事実は大変つらいものです。
ですが、この決断は櫻井君自身の意志。それならば櫻井君の気持ちを受け入れ、新たな道へ進む様を温かく見守るのも、ファンの務めではないのだろうか……。
私は深呼吸し、メールを開きました。
「白状する…俺…サクラ[続きを見る]」
そんなもん一通目から知っとったわ
もちろん一通目から彼が櫻井君ではないと事実は存じておりました。
なぜ櫻井君が私のアドレスを知っていて、あえて私にメールを送ってきたのか。
なぜ個人メールに謎のSNSのログインアドレスが貼りつけて送ってくるのか。
その他軽薄な文章。等。おかしいところだらけでしたからね。
いわゆるただの迷惑メール。いつもならメール消去で終わり……の話なのですが、彼らが犯してしまったミスが、とても味わい深かった。
彼らが犯してしまったミスというのは、主役を櫻井君にしてしまったこと。
最後のメールも、きっと送信側からすると名前の途中まで公開し、続きを読ませたい、怪しいアドレスをクリックさせたい一心の引き技だったのだと思います。
だが、彼らは騙る人間にサクライ君を選んでしまった。
そのせいで最後の最後、彼らは自ら正体を「白状する…俺…サクラ」と明かすはめになってしまった。
これがニノ君や大野君、松潤や相葉ちゃんならこうならなかったのに。
櫻井君を、そう、サクライ君を選んでしまったばっかりに…。
彼ら自身も予測していなかったのではないかと思うのですが、偶然の巡り合わせというのは実に奥深く、そして興味深いと改めて感じさせられた事件でした。
最後になりました。
実在の人物、団体などには、全く関係御座いません。
【追記
まさか8年の間にこんなにサクライ君をとりまく環境が変化するとは思っていませんでした。櫻井君だけでなく彼ら全員の未来がナイスな心意気で満ちたものとなるよう、心より祈っています。桜咲ケ。