由緒正しきエロティック

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ポンコツの宅急便

【2013年11月10日に書いたブログを再編集の上、再掲しています。】

 

すこし坂になっている道に、2トントラックを駐車したときの話なんですが。

 

三宮っていう、兵庫県有数の繁華街に、仕事で行ってまして。
その日はあっちいってこっちいってとバタバタと移動せねばならない日だったのですが、まあ、とても焦っていたのですね。時間の制限とかあって。

 

ヤベッ! ってキーを抜いて車を飛び降りて、ドアの鍵をかけてダッ! と走り出したのですが、
車の後ろを抜けようとしたときにですね、なんかね、なんかも、視界の端でダッ! って駆けだしたんですね。


停めたはずのトラックがね、こっちに向かってゆっくり向かってきてました。


坂の頂上にトラックの頭が向くように駐車してたんですが、じりじり、じりじりってね、こっちに向かってきてるんですね。どうみても距離詰めてきてるんですよね。


あっ。サイドブレーキ引き忘れたなー。

 

都会ですから他の業者もたくさん車を停めてまして、私の停めたトラックの後ろにも大きな冷蔵車が止まってたんですけど、このままいくと、誰がどう考えたって私のトラックがメテオドライブする状況なんですよね。ビックバンですよね。
その冷蔵車の後ろにも最低8台は車が停まっている状況ですよね。ビリヤードですよね。
最終的に確実大通りに押し出しホールインですよね。
夕日傾く夕方4時、さあさあよってみてらっしゃい、おっかなびっくり華麗な玉突きショウ!

…。

 

いやいやいやいやアカンアカンアカンアカン!!

 

この間、0コンマ秒。
次の瞬間には、ガッ!! と車のアオリ部分を掴み、全力でグッ!! と車体を抑えていました。


ズズズ…ッ、腕の筋肉が軋み、コンクリートを激しく摩擦しながら足の裏が表面を滑っていく。
「クッ…!」
バトル漫画でよくある、敵のスゴイビーム攻撃を受け止めてるシーンあたりを思い浮かべていただいたら、わりとしっくりきていただけると思うのですが、あんな感じでした。
ここは任せてー! 私がくい止めるからー! って感じだった。
原因私なんですけど。

 

するとですね、奇跡が起きまして。
車体がね、なんとか止まったんです。腕力と脚力で。
うわ、すげー! 鍛えた甲斐あったなー! ってなったんですけど。

 

安心したのも束の間。
まあ当たり前なんですけどね。

 

誰がサイドブレーキ引きにいくねんってなりましてね。
手離したら車動いちゃいますからね。一ミリたりとて動けませんからね。
私安定の劇団ひとりなんでね。


もうね、叫びましたよね。
サイドブレーキ引いてもらえませんかー!」って。
世界の中心で愛を叫んだ森山未來がいたなら、三宮の中心でサイドブレーキ叫んだのはこの城田ジョージだってね、アカデミー賞もらってもいいぐらいの熱演でしたからね。自作自演賞あたり受賞してもよかった。

 

さいわい、近くを通っていた黒いエプロンの男性が助けてくださいまして、サイドブレーキを引いてくださってことなきを得ました。
「さすがにビックリしたわ」と言われて、そら2トントラックを押さえている知らない女に突然「サイドブレーキ引いてもらってもいっすか!!」って言われたら驚くわー「私も驚きました」って返したけどどう考えてもお前発言していい台詞じゃない。

 

そのあとふつうに仕事していたのですが、
「私さっきね! 2トントラック支えたんすよ!」って一緒に現場に行っていた人に話したら、
「ヘタしたらお煎餅になってたかもなー」
って返されて。
その場では、アッハッハッハッって笑ってたんですけど、不意にですね。そういえば、2トントラックって、車体の重量、どれくらいあるんだろうって疑問に思いまして。ちょっとね、後々ググってみたんですけどね。


「2t
 重量:2.330kg」


生きてるってそれだけで奇跡なんだなって思いました。

(トラックが)おちこんだりもしたけれど、私は元気です。